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方法 · コーディングエージェントで公開科学データを分析

天文学を学んでいなくても、コーディングAIでNASAの公開データから惑星候補を発見。そのうち1つは望遠鏡の観測時間まで獲得しました

Claude CodeのようなコーディングAIにNASAのTESS望遠鏡の公開観測データを任せると、AIがデータをダウンロードし、探索コードを書いて、星が規則的に暗くなる信号を探し、偽の信号でないかも検査します。人が決めるのは、何を問うか、何を合格・不合格とするかです。こうして見つかった信号は、どれもまだ専門家の確認を経ていない「候補」です。天文学を学んだことのないプロダクトマネージャーが見つけた候補が観測時間を得るまでの経緯、そのRedditとXの投稿を見て同じ方法を試した人たち、同じ頃に星の変化を見つけた独立研究者の事例をまとめました。

2026年10月19日·事例 4件

出典:Pavel RabtsevichのX

天文学を学んだことのないスペインのプロダクトマネージャーPavel Rabtsevichは、9月末にr/ClaudeAIで"I used Claude Code to find it(Claude Codeで見つけた)"と惑星候補の話を投稿し、この投稿はスコア5,995、コメント705件を集めました。 10月7日にXに投稿したスレッドは閲覧119万回を超えました。 その後の数日間で、この投稿を見て同じ方法を試した人たちが、自分の見つけた候補を次々に公開しました。 10月11日には独立研究者のFriedrich Otto Kroneも、コーディングエージェントで白色矮星の増光候補を見つけて公開しています。

Yaleの天文学者出身で、現在はAI業界で働くGreg Laughlinは、Scientific Americanでこの件を"a great example of human-AI teamwork(人とAIが協力したよい例)"と評しました。

4つの事例とも、結果はまだ専門家の確認を経ていない「候補」です。AIが担ったのは公開データのダウンロード、探索コードの作成、偽の信号かどうかの検査で、人は問いと合格・不合格の基準を決めました。

Reference 01天文学を学んだことのない、スペインのプロダクトマネージャーPavel Rabtsevich · X・Reddit(Claude Code・Codexの活用記を投稿しているアカウント)

116光年先の星に地球の1.4倍の惑星候補。NASAのTESSの観測時間も割り当てられました

116光年離れた星TIC 4206066は、3.18日ごとに約0.05%、2時間ほど暗くなります。惑星が星の前を横切っているのなら、その惑星の半径は地球の約1.4倍です。Rabtsevichが星の暗くなった時刻を22回確かめたところ、22回すべてが3.18日周期で計算した時刻どおりに暗くなっていました。 11.13日ごとに暗くなる、より弱い信号も見つかりましたが、こちらについては本人も"The evidence for that one is much weaker(証拠はずっと弱い)"と書いています。

さらに、データから1年分を隠し、残りの年だけでその年に星が暗くなる時刻を予測するテストを、2018年・2020年・2025年のデータを1つずつ隠して3回行い、3回とも的中しました。星のカタログや文献36件、TESSの自動検出アラート340,505件と照合し、すでに報告された信号でないことも確かめています。 この照合は公開されているリストに基づくものです。Scientific Americanによると、この信号は2020年にTESSの検出フィルターに一度かかったものの、証拠不足で外されました。天文学者Michelle Kunimotoが偽の信号を取り除くために作った検査ツールLEO-Vetterを使った探索でも、2026年初めにこの候補が選び出されていましたが、公表はされていませんでした。 約2週間でClaude CodeとCodexを使って作った分析は74件、スクリプトは1,000本を超えました。

データのダウンロード、探索コードの作成、減光の形のフィッティング、周辺の星や偽信号の検査、グラフの作成、失敗したテストの再実行は、Claude Code(Opus 5.5・Fable 5.1)が担いました。Rabtsevichは"I chose what questions to ask, what tests mattered, and what counted as pass/fail.(何を問うか、どのテストが重要か、何を合格・不合格とするかは自分が決めた)"と書いています。結果のレビューは、Codexと、読み取り権限だけを与えた新しいエージェントセッションが別々に行いました。

9月25日にはZenodoにプレプリントを公開し、閲覧6,542回、ダウンロード900回を記録しました。 TESSの裁量観測(DDT)の承認リストには、この星を2分間隔で観測するという本人の提案が承認済みとして載っています。リストの原文は次のとおりです。"Pavel Rabtsevich | Two-minute cadence for TIC 4206066, a nearby K-dwarf with a 1.4R planet candidate(近くのK型矮星TIC 4206066を2分間隔で観測、地球半径の1.4倍の惑星候補)"、承認は"yes"。 この承認により、TESSは次の観測期間中、この星の明るさを2分ごとに記録します。

TESSは空を区画に分け、1区画ずつ順に撮影します。この観測期間をセクターと呼びます。この星を再び撮影するセクター110は、10月31日から11月26日までです。Rabtsevichは10月6日、セクター110の間に星が暗くなる時刻を、3.18日の信号と11.13日の信号それぞれに基づいて事前登録しました。3.18日の信号では9回、11.13日の信号では3回暗くなると予測しており、予測誤差は約4分です。2018年・2020年・2025年のデータを隠して行った3回の予測テストは既存のデータによるもので、事前登録した予測を新たな観測で確かめるテストは今回が初めてです。 スレッドの最後には、その星まで飛んでいける3Dサイトtic4206066.pages.devを添えています。

Reference 02自ら"im not an astronomer(天文学者ではない)"と明かすRedditユーザーThick_Ad_9875 · Reddit・Zenodo

Rabtsevichの投稿をきっかけに近くの小さな星2,900個を洗い直し、どのリストにもない地球の1.3倍の候補を2つ発見

Thick_Ad_9875はRabtsevichの投稿を見て、Opus 5.5で200光年以内にある小さな星約2,900個を調べ直しました。選んだのは、TESSが何年にもわたって撮影していながら広視野のフルフレーム画像にしか写っておらず、どの探索プログラムもその複数年分のデータをまとめて解析したことがない星です。始める前に、自分で組んだ探索設定でRabtsevichの信号を見つけ直し、設定が正しく動くかをまず確かめました。

2026年のデータを受け取る前に、候補の星が暗くなる時刻と判定基準を、後から変えられない形で記録しておきました。この予測テストで候補1つは脱落し、2つは予測した時刻に暗くなって残りました。

残った候補のうち、TIC 451641911は134光年離れていて、3.91日ごとに約0.06%暗くなります。TIC 26432942は112光年離れていて、10.39日ごとに約0.07%暗くなります。惑星であれば、どちらも地球の約1.3倍の大きさです。2つの候補は、Thick_Ad_9875が探せた惑星・候補のリストにも、TESSの自動アラート約31万2千件にも見当たりませんでした。

どちらも検査ツールLEO-Vetterの17項目の検査をすべて通過しました。別の検査ツールTRICERATOPSが出した「その星を回る惑星である確率」は、TIC 26432942が96.5%、TIC 451641911が76.7%でした。 検査結果と予測時刻はZenodoで公開されています。

Reference 03Web解析企業Wingifyを創業し、現在はAI研究所Lossfunkを運営するParas Chopra · Xフォロワー24万人

午前中だけClaude CodeでTESSのデータを探り、地球サイズの惑星候補を2つ発見

Chopraは、RabtsevichがClaude Codeで惑星候補を見つけたというRedditの投稿を見て、TESSが長い間隔でしか撮影していない近くの星のデータを、Claude Codeで書いた解析プログラムで午前中かけて探りました。

TIC 370612437ははくちょう座の方向、158光年の距離にあり、3.56日ごとに0.02%暗くなります。惑星であれば、ほぼ地球と同じ大きさです。HIP 114417はアンドロメダ座の方向、134光年の距離にあり、4.93日ごとに0.03%暗くなります。大きさは地球の約1.1倍です。2つの星の減光は、2019〜2024年のうち4つの観測年にわたって、それぞれ55回と21回繰り返されました。

1年分のデータを隠し、残りからその年に星が暗くなる時刻を予測するテストは、4年のうち3年で的中しました。手法と結果は、Codexと新しく立ち上げたClaudeのセッションが別々にレビューしました。Chopraは結果を50秒の動画とともにXに投稿し、NASAの系外惑星候補共有サイトExoFOPにコミュニティ候補(CTOI)として報告するとしていましたが、10月19日時点でTIC 370612437のExoFOPページにはまだコミュニティ候補の登録がありません。

Reference 04Zenodoで所属を「独立研究者」としているFriedrich Otto Krone · Zenodo

惑星だけでなく星の変化も:冷えていく白色矮星が2024年12月に急に明るくなった候補

KroneはCodexとClaudeのコーディングエージェントに、TESSと、別の掃天観測プログラムZTFのアーカイブデータの解析を任せました。そして、表面が振動する冷えていく白色矮星LP 119-10が2024年12月に突然明るくなった、アウトバースト(増光)の候補を見つけました。明るさは、赤色から近赤外線までを撮るTESSのデータで約6.5%、緑色のフィルター(gバンド)で撮るZTFのデータで31%以上上がりました。2つの数字は、異なる色の光で測った明るさです。575.9秒周期の振動も検出されました。振動する冷えた白色矮星のうち、アウトバーストが知られているものは10個もありません。

プレプリントには"a second AI system repeated the analysis independently from the raw archive files(2つ目のAIシステムがアーカイブの生データから独立して解析をやり直した)"と書かれています。

みんなの反応

よかったという声

  • “There's every reason to expect that this candidate super-Earth will pass further tests and make it into the official census.”

    このスーパーアース候補がこの先の検証も通過し、公式の一覧に載ると考える理由は十分にあります。

    この星がTESSの2分間隔観測リストに入ったことを歓迎しての発言です。

    Greg Laughlin(Yaleの天文学者、現在はAI業界) · Scientific Americanscientificamerican.com
  • “I am a real astronomer and I looked into it and this doesn't appear to be bs.”

    私は本物の天文学者です。調べてみましたが、でたらめではなさそうです。

    ErrorlessQuaak · Redditreddit.com
  • “Without these tools I couldn't have processed a data set this size and carried it through to a result.”

    これらのツールがなければ、この規模のデータセットを処理して結果までたどり着くことはできなかったでしょう。

    Pavel Rabtsevich · Gizmodoのインタビューgizmodo.com
  • “This is incredible, and one of the best uses of AI that I have seen.”

    本当にすごいです。これまで見てきたAIの使い方の中でも、最高のものの一つです。

    Wordenskjold · Redditreddit.com

物足りなかったという声

  • “almost everything we found turned out to be junk. starspots, instrument glitches, neighbor stars leaking light into the pixels etc.”

    見つけたものは、ほとんど全部ゴミでした。黒点、機器の不具合、隣の星の光がピクセルに漏れ込んだもの、などです。

    初期の候補の半分は自動検査をすべて通過した黒点でした。隠した年の情報が予測テストに漏れ込み、ノイズまで通過させていたバグは、新しいClaudeセッションが見つけたそうです。

    Thick_Ad_9875 · Redditreddit.com
  • “Models agreeing with each other isn't evidence.”

    モデル同士の意見が一致しても、それは証拠ではありません。

    Rabtsevichが頼りにしているのは、誰でも測れる信号、誰でも再実行できる計算、比較用のサンプル、次のデータが届く前に公開しておいたルールだそうです。

    Pavel Rabtsevich · Scientific Americanscientificamerican.com
  • “Important caveat: a faint neighbouring pair of eclipsing stars could fake the dip, so these exoplanets remain candidates pending further verification.”

    重要な注意点があります。近くにある暗い食連星が減光を装うことがありうるため、これらの系外惑星はさらに確認されるまで候補のままです。

    食連星とは、互いを隠し合いながら回る2つの星のことです。

    Paras Chopra · Xx.com
  • “AI tools won't necessarily be helpful in the process of confirming planets, but [they] will likely continue to be used to string together publicly available code to help search for planets and run them through the basic vetting processes…”

    AIツールが惑星を確定するプロセスで必ずしも役立つとは限りませんが、公開されているコードをつなぎ合わせて惑星を探し、基本的な検査にかける用途では、おそらく今後も使われ続けるでしょう…

    Kevin Hardegree-Ullman(NASA Exoplanet Science Institute) · Gizmodogizmodo.com

始め方

Claude Code、Codex、Grokなどのコーディングエージェントに、下の依頼を貼り付けるだけです。NASAのデータは無料です。

  1. はじめの依頼

    この記事の方法を自分でも試してみたい。 https://www.working-ref.com/ja/library/coding-agent-science-data-2026-10 事例の手順と注意点に沿って、私の関心分野[例:天気、地震、遺伝子データ]の公開データで試せそうなことを3つ提案して。1つ選んだら、必要なツールのインストールからすぐに始めて。選ぶものがなければ、最初の事例のようにNASA TESSのデータで惑星候補探しから始めて。

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