OpenAIが自社のコーディングエージェントに「最後まで自分でやれ」モードを搭載した。 Codex CLI 0.128.0の/goalコマンドだ。

名前に聞き覚えがあるはずだ。昨年秋にオーストラリア人開発者Geoff Huntleyが公開した「Ralphループ」を、OpenAIが正式機能として取り込んだのだ。while:; do cat PROMPT.md | claude-code; done ── たった一行のBashトリックが6ヶ月でビッグテックのコーディングエージェントのメイン機能に昇格した、珍しいケースだ。

これは何?

2026年4月30日にリリースされたCodex CLI 0.128.0の主要な追加機能がpersisted /goal workflowsだ。GitHubリリースノートの表現を借りれば ── 「app-server APIs, model tools, runtime continuation, and TUI controls for create, pause, resume, and clear」が一気に追加された。 ただの新しいスラッシュコマンドではなく、セッションが切れても生き続ける長期目標システムなんです。

Simon Willisonはこれを一文で要約した。「OpenAI's Codex CLI coding agent adds their own version of the Ralph loop: you can now set a /goal and Codex will keep on looping until it evaluates that the goal has been completed... or the configured token budget runs out.」

実装は2つのプロンプトファイルで動く ── goals/continuation.md(各ターン終了時に「目標は達成されたか?」と自問するプロンプト)とgoals/budget_limit.md(トークン上限に達したときに安全に終了するプロンプト)だ。サイクルが終わるたびにこの2つのプロンプトが自動注入され、エージェントは人間の介入なしに次のアクションを決める。

Ralphループがなぜいきなりスタンダードになったのか?

RalphはThe SimpsonsのキャラクターRalph Wiggumから取った名前だ。「善意はあるが少し間抜け」── この比喩そのものだ。一度に一つのタスク、失敗したらプロンプトに「看板」を追加してループを再開。Geoff Huntleyはこの方法で$50,000の外注契約を$297で完了したと公開した。 CURSEDという新しいプログラミング言語のコンパイラをLLVMで自動生成した事例まで登場している。

核心となるインサイト3つ:

  1. 一度に一つのタスク
    マルチエージェントマイクロサービスではなく、単一プロセスのモノリシック構成。1サイクル=1機能の実装。
  2. 決定論的なコンテキスト割り当て
    仕様・計画を毎ターン同じフォーマットで注入する。「実効コンテキストウィンドウは147〜152K」というHuntleyの観察が鍵 ── 200Kと宣伝されていても、実際の有効な上限はそれより狭い。
  3. 失敗がそのままチューニングになる
    エージェントが的外れな動きをしてもシステムを作り直すのではなく、プロンプトに「これはやるな」と一行追加してループを再開する。人間はオペレーター(operator)であり、コーダーではない。
項目 従来のCodex CLI (0.127以前) Codex CLI 0.128 + /goal
作業単位 開発者が1ターン入力 目標1文 → 自律マルチターン
中断時の処理 セッションが切れるとコンテキスト消失 persisted ── 再開・一時停止・リセット可能
終了条件 開発者が「完了」と判断 エージェントの自己評価 OR トークン上限
運用モデル コパイロット ── 人間の隣でサポート オーバーナイト ── 寝て起きたら完成
リスク 誤った一行 トークン暴走・無駄な処理の積み重ね

Anthropicはすでに昨年秋からClaude CodeのSDKレイヤーで同様のパターンを実装しており、 OpenAIはそれを正式なスラッシュコマンドとして昇格させた。「人間不在のコーディング」がもはや実験ではなく、製品のUIとして定着したことが転換点だ。

始め方のポイント

  1. Codex CLIをアップデート
    codex update または npm i -g @openai/codex@latest。0.128.0以上であることを確認。
  2. グリーンフィールドプロジェクトから始める
    Huntley本人が強調 ── 「既存のコードベースにRalphは絶対に使わない」というのが彼の言葉だ。新規プロジェクトの0〜90%の段階が最も効果的。
  3. SPECS.mdを一枚書く
    機能仕様+標準ライブラリ+絶対禁止事項。毎ターン自動注入されるコンテキストなので、短く決定的に書くこと。
  4. /goalを入力
    /goal "Build a todo CRUD API with SQLite + tests + README" のような一文。budget_limit.mdにトークン上限を明記。
  5. ログだけ見ておく
    最初の2時間は離席せずにモニタリング。無駄なパターンを発見したらSPECS.mdに一行追加して再スタート。

よくある質問

(FAQSection自動レンダリング ── contentには含めない)

さらに深掘りしたい人へ

Simon Willison — Codex CLI 0.128.0 adds /goal リリース分析の一次ソース ── Eric Trautのツイート・リリースノートを引用 simonwillison.net

Geoff Huntley — The Ralph Loop オリジナルRalphのすべて ── $50K → $297の事例+コンテキストウィンドウのハック ghuntley.com

OpenAI Codex GitHub Releases v0.128.0公式リリースノート ── persisted /goalワークフローの全仕様 github.com/openai/codex

Th0rgal/open-ralph-wiggum Codex・Cursor・Copilot CLIすべてでRalphパターンを動かせるオープン実装 github.com/Th0rgal