AIに文章を書かせてみたら、読んだ瞬間に「あ、これAIが書いたやつだ」ってなったことありますよね? その正体があるんです。業界ではこれをAIスロップ(slop)と呼びます。繰り返される文章構造、ありきたりな言葉選び、やたら滑らかなトーン——これが積み重なると、文章が「量産品っぽい」感じになるんです。
これは何?
Ben Tossell(@bentossell)が自身のニュースレター「Ben's Builds #2」でシェアした「アンチAIスロップ」ライティングスタックです。 Benは「AI文章が嫌いだ」と言いながらも、白紙の前で詰まったときだけはAIを使うと話していました。そこで見つけた解決策が、3つのツールの組み合わせです。
一つずつ見ていきましょう。
1. Every AI Style Guide — 「自分の文体をAIに教えるマニュアル」
Everyというメディア会社が作ったAIスタイルガイドのフレームワークです。 核心のアイデアはシンプルです: AIに「何を」書くか指示するのではなく、「どのように」書くかを教えるんです。
スタイルガイドなしで書かせると、AIは「安全で平均的な良い文章」に収束していきます。 それがスロップの正体なんです。スタイルガイドはAIを平均から引き離して、自分固有のクセに向けて押し込む役割を果たします。
ガイドに入れる主な項目はこんな感じです:
| 項目 | 説明 | 例 |
|---|---|---|
| ボイス & トーン | 3〜5箇条で声を表現 | 「レポートじゃなくカフェで話すように」 |
| シグニチャームーブ | 自分がよく使う手法 | 「具体的なエピソードから始める」 |
| アンチパターン | 絶対に使ってはいけないこと | 「〜は革命的です 禁止」 |
| 例文 | 良い例 + 悪い例のペアリング | 「これは正解/これがダメな理由」 |
| リビジョンチェックリスト | 最終確認の基準 | 「抽象名詞3つ以上連続禁止」 |
おもしろいのは作り方です。自分で「私はこんなスタイルだ」と書くより、AIにインタビューさせる方が効果的なんだそうです。 AIが「この文章とあの文章、どちらがより自然ですか?」と聞いてくれると、抽象的な説明より具体的な好みが見えてくるからです。
2. Tropes.fyi — 「AI文章パターン33個に名前をつけて晒し上げる辞典」
Ossama Chaibが作ったこのサイトは、AIが繰り返し使う文章パターンに名前をつけて公開処刑(?)するディレクトリです。 現在6カテゴリ、33個以上のトロープが登録されています。
いくつか見るだけですぐピンとくると思います:
AIスロップ代表パターン5選
Negative Parallelism — 「これはXではありません。Yです。」AI文章の最頻出パターン。
Delve and Friends — 「delve」「leverage」「robust」「streamline」といったAI専用ワード。
Em-Dash Addiction — かつてはスタイリッシュな句読点だったのに、AIが乱用してもはや危険信号 —。
Rhetorical QA — 「結果は? 衝撃的でした。」自分で質問して自分で答えるパターン。
Fractal Summaries — 導入で要約、本文で要約、結論でまた要約。同じことを3回繰り返す。
サイトには3つのツールがあります:
- ai;dr — AIが書いた長文から元のプロンプトを逆推測して表示します。3,000単語の記事の実態が「write about X」だったと暴露するわけです。
- AI Vetter — URLを入れるとHuman / AI-assisted / Suspicious / Pure AI Slopで判定します。LLMなしで純粋な正規表現+頻度分析で動いています。
- Deslopify — テキストを入れるとAIっぽい部分をdiffスタイルでハイライトし、代替文章を提案します。
そしてこのすべてのパターンをtropes.mdという単一ファイルにまとめています。このファイルをAIのシステムプロンプトに入れると、AIが自動的に該当パターンを避けるようになります。
3. jackbutcher.md — 「ツイート5万件から抽出した文章の公式」
Jack Butcher(Visualize Value創業者)の6年分のツイート約5万件を分析して、うまくいった13,962個のパターンを逆設計したマークダウンファイルです。
このファイルが整理した核心メカニクスを見ると:
- 6つの修辞的ムーブ — 対比フレーム、リフレーム、数学的定量化、不都合な真実、凝縮された知恵、無表情ユーモア
- 12種類の対比フレーム — リフレームが上位ツイートの23%を占める。並列宣言、逆説、条件付き開示など
- 11種類の語レベルの技法 — 頭韻の対比、拍子合わせ、対句法、内部韻律など
- 句点を省略するとエンゲージメントが約20%上昇というデータまで
使い方はシンプルです。このファイルをAIの会話に貼り付けて「このスタイルで〜について書いて」と言うだけです。 Jack Butcher本人は「ファイルが堀ではなく、人間が堀だ」と言ってファイルをオープンソースで公開しました。
何が変わるのか?
3つのツールをそれぞれ使っても、まあそんなもんです。合わせて使うときに本当の変化が生まれます。Ben Tossellも「この3つを1つのスキルにパッケージングするのが次の課題」と言っていました。
| 普通にAIに任せた場合 | 3種スタック適用後 | |
|---|---|---|
| 文体 | 「安全な平均」 — 誰が書いたか分からない文章 | 自分固有のトーンとリズムが反映される |
| AIパターン | 「これはXではありません。Yです。」の繰り返し | 33のトロープを自動回避 |
| 構造 | 序論-本論-結論のありきたりな流れ | 対比、リフレームなど多様な修辞構造 |
| 編集時間 | 全面書き直しが必要 | 部分修正で十分 |
| 読者の反応 | 「AIが書いたね」の一言 | 「これ自分で書いたの?」の一言 |
"I hate AI writing, and consider myself a poor writer. I don't use AI writing much except to get me off the blank landing page problem."
— Ben Tossell, Ben's Builds #2
Benのアプローチが正直で好きです。AIの結果物をそのまま使うのではなく、足場(スキャフォールディング)としてだけ使い、そこから自分で修正していくやり方です。 この3つのツールはその足場の品質を上げて、修正の手間を減らす役割なんです。
始め方のポイント
- まずtropes.mdをダウンロード
tropes.fyi/tropes-mdからファイルを入手して、使っているAIツールのシステムプロンプト(カスタムインストラクション)に入れましょう。 ChatGPTなら「Customize ChatGPT」に、Claudeならプロジェクト設定に貼り付ければOKです。これだけでも最もありきたりなAIパターンは消えます。 - 自分の文章スタイルガイドを作る
Everyのガイドを参考にして、自分だけのスタイルガイドを作成しましょう。 自分で書くのが難しければ、AIに「私の文章スタイルについてインタビューして」と頼みましょう。過去に書いた5〜10本の文章を一緒に渡すと、AIがパターンを抽出して質問してくれます。その結果をまとめれば、自分だけのスタイルガイドになります。 - jackbutcher.mdを参考にする
GitHubからファイルを入手して読んでみましょう。 全部マネする必要はありません。「対比フレーム」「リフレーム」といった修辞構造を理解して、自分の文章に合うものだけスタイルガイドに追加すればOKです。 - 3つのファイルを1つにまとめる
tropes.md + 自分のスタイルガイド + jackbutcher.mdの必要な部分を1つのファイルにまとめてAIのシステムプロンプトに入れましょう。Claude CodeならCLAUDE.mdに、Cursorなら.cursorrulesに入れるとプロジェクト全体に適用されます。 - Deslopifyで最終チェック
文章を書き終えたら、tropes.fyiのDeslopifyに入れて最終確認しましょう。AIパターンが残っていればdiffスタイルで表示し、代替案まで提案してくれます。このステップを経るとスロップがほぼ消えます。
注意: ツールが文章を代わりに書いてくれるわけではありません
これらのツールはAIの結果物の出発点を上げてくれるだけです。最終的に文章を読んで、自分の声が合っているか確認して、不自然な部分を直すのは人間の仕事です。Ben Tossellも、AIの結果物は足場としてだけ使って自分で書き直すと言っていました。




