2026年4月2日、CursorがCursor 3.0をリリースしました。ただし今回はIDEのアップグレードではありません。VS Codeフォークの上にAIを乗せる時代を、自ら幕引きしたのです。ゼロから作り直した「Agents Window」がメインインターフェースになり、ファイルエディタはCmd+Shift+Pで呼び出すフォールバックになりました。 Cursor自社データによると、1年前はTabオートコンプリートのユーザーがエージェントユーザーの2.5倍いましたが、今は逆転してエージェントユーザーが2倍多い状態です。社内PRの35%は自律クラウドエージェントが書いているそうです。 コード自体を書くより、書かせる指示をする時代に移行した、ということです。
何が変わったのか?
以前のCursorは「VS CodeにAIを乗せたツール」でした。エディタが中心で、AIはサポート役でしたよね。Cursor 3はその前提をひっくり返しました。エージェントが単位、ファイルは付随するもの。サイドバーにはローカル・クラウド・Slack・GitHub・Linear・モバイルで起動したエージェントが並んで表示されます。クラウドエージェントは成果物のデモとスクリーンショットまで作成して見せてくれます。
「ファイルエディタ」ではなく「エージェントキュー」が新しい作業単位です。IDEは呼び出して使うフォールバック。
この変化の根拠は自社データです。CEOのMichael Truellは、AIソフトウェア開発を3つの時代に分けています。① Tabオートコンプリート、② 同期式エージェント(ステップごとに指示)、③ 自律クラウドエージェント。2025年初頭は①が圧倒的でしたが、1年で③が①を追い越しました。Cursorの社内エンジニアリングチームでは、マージされたPRの35%が自律クラウドエージェントによる作成だとCNBCが報じています。
- $2B ARR突破
2026年初頭の年間経常収益20億ドル。Anysphereの企業価値は$50Bと、6か月で2倍に。 - JetBrainsにも対応
3月4日にAgent Client Protocol(ACP)によりJetBrains IDEでもCursorエージェントが使用可能に。「Cursor vs VS Code」という構図はすでに時代遅れです。 - Composer 2独自モデル
3月19日リリース。Kimi K2.5ベース + 4倍のRL強化。200+トークン/秒、200Kコンテキスト、CursorBenchではClaude Opus 4.6比で90%安い。
一言でまとめると「エージェントOSへの転換」です。モデル(Composer 2)、インターフェース(Agents Window)、ランタイム(クラウドVM)、エンタープライズオプション(セルフホスト、3月25日リリース)の4つの軸を一気に整えたからです。
以前のCursorと何が変わったのか?
現場で実感できる違いを表にまとめました。バックエンドAPI追加作業を基準にしています。
| フェーズ | Cursor 2.x以前 | Cursor 3 |
|---|---|---|
| セットアップ | ターミナル + git checkout、サーバーを起動してPostmanを開く | Agent Chatで/worktreeコマンド — 隔離されたワークツリーを自動生成 |
| 実装 | コントローラー・サービス・ルートを直接記述 | エージェントがMCPでスペックを取得し、スキーマ認識のコードを生成 |
| テスト | ターミナルでテスト → スタックトレースを読んでIDEで修正 | エージェントが出力を読んで、失敗した依存関係をサブエージェントで自動修正 |
| レビュー | GitHubを開いてステージング → PR作成 | サイドバーのdiffでstage・commit・PRをひと続きに |
最も強力な新機能は/best-of-nです。/best-of-n sonnet, gpt, composer fix the flaky logout testのように複数のモデルを同じタスクに同時に投入し、隔離されたワークツリーで並列実行します。完了後は結果を比較して選んでマージ。 デメリットは、モデルごとに個別に課金される点です。3モデル = 3倍の課金。
そしてローカル↔クラウドのハンドオフが双方向に対応しています。ローカルで始めたセッションをクラウドに送り、ノートPCを閉じて寝ている間も実行を続けられます。クラウドで動いているものをローカルに引き戻してデバッグし、また送り返すことも可能。長時間作業が途切れません。 Composer 2がこのクラウドランタイムのデフォルトモデルです。
「説明するより指させ」— Design Modeは実に使えます。Cmd+Shift+DでブラウザのUI要素を直接選択すると、エージェントがHTML・CSS・バウンディングボックスをまるごと受け取り、「これを少し縮めて」が通じるようになります。
コミュニティの反応は割れています。Hacker Newsでは「エージェント優先はバックグラウンドの自律性を、コード優先は精密な同期的コントロールを求めている — 一つの製品に両方を入れると、どちらも不満になる」という指摘がありました。 Redditでは「このビューはコードとのつながりを断ち切る」という批判も少なくありません。コストも論争の的で、Cursorで週$2K使っていたユーザーがClaude Code Maxに移行し、1/10のコストで同じ生産性を出したという報告もあります。
① Plan ModeはウェブUIにはまだない(デスクトップのみ)。② Agents Windowが非アクティブのときにエージェントが止まるバグが4月初旬まで未解決。③ 一部ユーザーでキャッシュ読み取り問題によりComposer 2のトークン消費が平常の約10倍。④ Design ModeはChromeのみ対応(Firefox・Safari非対応)。⑤ FedRAMP・HIPAA認証なし — 規制環境では事前確認が必要。
始め方のポイント
インターフェース自体は無料でインストールできるので、まず試してみることはタダです。判断フローはこうなります。
- すでにCursorを使っている
アップグレード → Cmd+Shift+P → 「Agents Window」。慣れるまで数日かかります。既存のIDEも同時に開けるので、段階的な移行が可能です。 - エージェントワークフローが初めての場合
Agents Windowは無料ですが、Cloud Agents・Composer 2はPro($20/月)から。Proから始めて、ヘビーユーザーはPro+($60)やUltra($200)に移行する形です。 - 複数モデルの比較が必要な場合
Agent Chatで/best-of-nを使います。ワークツリー隔離により衝突なく並列実行できます。3モデル投入すると課金も3倍 — 重要な作業にだけ使いましょう。 - エンタープライズでコードを外部に出せない場合
セルフホストCloud Agents(Enterpriseプラン、3月25日リリース)。コード・ツール実行・ビルド成果物が社内に留まり、ワーカーがHTTPSでアウトバウンド接続します。
もう一点 — エージェントが生成したコードを批判的に読む力が必須です。マルチファイル作業ではエラーが頻発します。Google DeepMindのマルチエージェント研究によると、非構造ネットワークではエラーが最大17.2倍に増幅されます。per-agentの信頼性が99%でも、10段チェーンにすると約90%まで落ちます。 /best-of-nのワークツリー隔離が一部を緩和しますが、完全には解消されません。エージェントの出力が間違っているときに気づけるコード読解力がなければ、6か月後にコードベースが崩壊します。
Truellは「Cursorはもはやコードを書くツールではない。ソフトウェアを作る工場を建てるツールだ」と言っています。ビジョンとしては力強いですが、現場ではまだ工場が自律的には動いていません。ディレクターとして立ち、検収・修正を絶えず続けるイメージが実態に近いです。それでも、インターフェースがその未来に向けて先に敷かれていることは明らかです。
さらに深掘りしたい人へ
Cursor公式 — Meet the new Cursor Agents Windowの設計思想からComposer 2・ローカル↔クラウドハンドオフ・diff-to-PRフローまでの一次資料 cursor.com
DataCamp — Cursor 3機能の完全解説 /best-of-n、/worktree、Design Mode、Composer 2の価格、プラン別機能マトリクス、既知のバグまで一まとめ datacamp.com
InfoQ — コミュニティが割れた理由 Reddit・Hacker Newsの批判まとめ。エージェント優先 vs コード優先モデルの根本的な緊張関係とコスト論争 infoq.com
Latent Space — Cursorの第三の時代 $50Bバリュエーション、Graphite・Autotab買収、Cloud AgentsがIDEを超えた流れのビジネス背景 latent.space




