今年5月、アンスロピックは自社株を売っていると謳っていたプラットフォーム8社の取引をまるごと無効にしました。同じ時期、ある男はアンスロピックの株式だけに数千万ドルを注ぎ込んでいたんです——VCファンドもなければ、審査チームも、オフィスの看板すらないのに。

3秒でわかる要約
AIプレIPO株がブーム アンスロピック、SPV8社を無効認定 でもこの男は5億ドルを動かした 分かれ道は「承認の有無」ひとつだけ SPV提案を見極めるチェックリスト

SPVといっても、実は同じじゃなかった

アンスロピック、OpenAI、スペースXなど、まだ上場していないAIスタートアップの株式にお金が殺到しています。セカンダリーマーケットのプラットフォームの一つ、Unicorns Exchangeには、90日間で買い注文だけで総額1兆ドル規模の問い合わせが来たそうです。

これだけ需要があれば、「アクセス権を売ります」というプラットフォームが次々と出てくるのも当然ですよね。そして5月、アンスロピックは一線を引きました。取締役会の承認を経ていない株式の売買・譲渡は、会社の帳簿上は一切認めないと明言し、Open Doors Partners、Unicorns Exchange、Pachamama Capital、Lionheart Ventures、Hiive、Forge Global、Sydecar、Upmarketの8社を名指ししたんです。

「無効」と言われてもピンとこないかもしれませんが、実際にはこういうことです。お金は払ったのに、会社の株主名簿には名前が載らない。だから、その会社が将来IPOしても、そもそも登録されていないので転換できる株式自体が存在しないんです。アンスロピックが挙げている詐欺のパターンもよく似ています——「非公開のアクセス権がある」という主張、暗号資産など追跡しにくい決済方法の要求、そして取締役会の承認を示す証拠を絶対に出せないこと。

じゃあこの男はどうやって5億ドルを動かしたのか

Justin Ernestはディープテック投資会社Playground Globalで5年以上働いた後、Sabertooth Capitalを立ち上げました。ただ、正式なVCファンドを登録してLPを集めるには、普通12〜18か月かかるんです。Ernestはその時間を待ちませんでした。

代わりに、案件ごとに個別のSPVを組成し、ノミニー(名義)構造で株式を保有しながら、約30の中小機関投資家——主にファミリーオフィス——に一件ずつ個別に提案していきました。この12か月で動いた金額は、アンスロピック、Databricks、PsiQuantum、スペースX、Base Powerなど10社に対して約5億ドル、1件あたり1000万〜2億7500万ドルです。

5億ドル
12か月間の投資規模
10社
投資した企業数
30社
参加させた中小機関投資家数

ここに決定的な違いがあります。Ernestは常に会社が公式に承認したラウンドの中でだけ株式を取得しているんです。既存株主をあちこち探して密かに株式をかき集めるセカンダリー取引とは違い、発行会社が認めた正式な投資ラウンドに参加しているということです。ファミリーオフィスのCIOであるBenjamin Wagnerはこう言います。「Justinは本物の投資家です。とにかく資本を集めようとするだけの他の機関とは違います」 PsiQuantumのCFOが自らWagnerにSabertooth経由の投資を勧めるほど、会社側からも信頼を得ているんです。すでに大きな成功例もあります——ポートフォリオ企業だったGroqが、Nvidiaに200億ドルで買収されました。

結局、何が違うのか

SPVという器そのものは、実は同じです。分かれるのはただ一つ、発行会社がその取引を知っていて、承認していたかどうかです。

無許可のセカンダリープラットフォームErnest式SPV
株式取得の経路既存株主からの密かな買い集め会社公式の投資ラウンドへの参加
発行会社の承認なし事前に取得済み
資本政策表への登録されないノミニー経由で正式登録
IPO時の転換転換できる株式がそもそもない正常に転換される
会社・CFOの反応警戒対象になるむしろ他の案件を紹介してもらえる

この違いが今まさに重要なのは、VCを介さず直接案件を探す資本が急速に増えているからです。ジェフ・ベゾスのベゾス・エクスペディションズは、今年6月の1か月だけでAIスタートアップ5社に直接投資しました。お金はいくらでもあるのに、「本物のアクセス権」を持つ人はごく少数——それが今のこの市場のボトルネックなんです。

SPV自体の収益構造も知っておくと役立ちます。標準は管理報酬0%、キャリー(成功報酬)5〜10%。伝統的なファンド(管理報酬1%+キャリー20%)よりかなり薄いんです。だからこの構造だけでは組織を大きくするのは難しく、Ernest自身も「最終的な目標は伝統的なファンドを作ること」だと言っています。今のSPVの実績をトラックレコードにして、ファンドレイジングにつなげようとしているわけです。

ちなみに、日本だと?

国内でも特別目的会社(SPV)という仕組み自体は珍しくありません。LPSやLLC形態で案件ごとに法人を立てて投資する手法は、すでに使われています。海外のプレIPO株をSPV経由で提案された場合も、今回のアンスロピックのケースと同じく、「発行会社がその取引を承認しているか」から確認する習慣をつけておくと安心です。

SPVの投資提案を受けたら、5分で確認すること

  1. まず発行会社の承認文書を求める
    「取締役会がこの取引を承認した証拠を見せてほしい」と聞いてみましょう。出せなければ、それだけで判断がつきます。
  2. 譲渡制限条項を確認する
    定款や投資契約書にtransfer restriction(譲渡制限)条項があるか見てください。あれば、承認されていない取引はそもそも無効です。
  3. 決済方法をチェックする
    暗号資産や海外個人送金など、追跡しにくい決済を求められたら、それ自体が警告サインです。
  4. ディールリードの実績を確認する
    実名、過去の案件、レファレンスをチェックしましょう。Ernestのように会社のCFOが自ら紹介してくれるほどの信頼を築いているかが、本当の判断材料です。
  5. 手数料体系を聞く
    SPVの標準は管理報酬0%+キャリー5〜10%です。それよりかなり高い条件を提示されたら、疑ってかかりましょう。

もっと深く知りたいなら

How Justin Ernest invested nearly $500M into hot startups Sabertooth CapitalのSPV戦略を取り上げた元記事 techcrunch.com

Anthropic warns investors against secondary platforms アンスロピックが無許可セカンダリープラットフォーム8社を名指しした公式警告 techcrunch.com

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How one VC invested $400M in Anthropic and SpaceX Ernestが用いるSPVモデルへのベンチャー業界の反応も含めた分析 techbuzz.ai

Jeff Bezos' Family Office Accelerates AI Bets ファミリーオフィスがVCを介さず直接AIスタートアップに投資する流れ pymnts.com

Special Purpose Vehicles in Venture Capital SPVと伝統的ファンドの手数料・キャリー構造の比較 govclab.com